「塩竈なでしこ」が奏でる、和と洋のハーモニー
初めまして。
アリティーヴィー新人クルー、高橋フミヤと申します。母親が藤井フミヤのファンでした。
潮風吹き荒ぶ2月上旬、宮城県塩竈市にある「株式会社 十字屋」さんに取材に行って参りました。
実は私、生まれも育ちも塩竈の自称「竈っ子(がまっこ)」。地元の塩竈を愛しています。
初めての取材先が塩竈。なんという幸運でしょう。
勝手に塩竈に縁を感じつつ、十字屋さんの門を叩きました。
お店の門をくぐると広がる磯の香り。創業以来の主力商品であるホヤの香りです。
「海のパイナップル」とも言われるホヤ。震災前、日本国内で生産されたホヤは年間約1万トン。
そのうちの約9割が宮城県内での生産でした。しかし、東日本大震災による津波の影響で県内の養殖棚が全て流されてしまい、生産は一気にゼロへ。ホヤの水産加工品を主力商品とする十字屋さんも、津波による浸水の影響で店舗の営業再開までに10日間かかりました。
当時の話を下館達也社長(60)に伺いました。
『採算を度外視して、宮城の人々のためにホヤを届けたいと思った』
そう語る下館社長は震災後、ホヤの仕入れ先を青森県の陸奥湾産に変更しました。養殖棚が残っており、宮城県産のホヤの種苗を使った養殖が行われていたからです。しかし、収穫量が減れば、当然仕入れ値も高騰します。
下館社長は、仕入れ値の割りに合わない二束三文の卸値を設定。
新規の顧客への販売を断り、既存の顧客への販売を、注文に対して半分の量で対応しました。
供給量は徐々に回復。ホヤの養殖には4年かかるため、今年の夏には県内産のホヤが復活する予定です。
そんな下館社長の強いリーダシップと人情味溢れる人柄のためか、社内の雰囲気はとても明るく、結束力の固さを伺えました。
『女性のマニュアルにはないきめ細かさが、うちの商品を支えているんです』
と、下館社長。なんと工場で働く社員は全員が女性。仕事には、必ずその人の家の台所事情がでるとのこと。
「テーブルを拭いておいて」という同じ指示を出しても、女性と男性では仕上がりが全く違ってくるそうです。
そんな女性のポテンシャルの高さに目をつけた下館社長。
面接の時に聞く質問も『台所はきれいか?』、『料理は好きか?』等、一風変わっています。
そんな選ばれし女性従業員の方々が作る製品は、やはり絶品でした。
この日頂いたのは「寒のり佃煮」。王道の食べ方でもある、ご飯と一緒に頂きました。
往々にして、「のりの佃煮」は食卓の主役にはなれません。あくまでご飯を支える「脇役」。
しかし、この日食した「寒のり佃煮」は文句なしに「主役」でした。
あまりの美味しさに感動していると、次なる感動が。
「寒のり佃煮」のオススメのアレンジメニューとして紹介して頂いた「オープンサンド」。
海苔の佃煮にわさびを混ぜ、自家製海苔ジャムの完成。
バターを塗ったパンにその海苔ジャムを塗って、パクリ。
「海苔の佃煮はご飯と一緒に食べるもの」
という固定観念に囚われていた自分が恥ずかしくなりました。
和と洋のテイストが見事に調和し、口の中で広がるハーモニー。
パンに塗るのは既存のジャムだけではないのです。「海苔ジャム」もアリなんです。
尚且つ「十字屋」さんの佃煮は砂糖を使わず、水飴を使用して作られています。
「甘いもの大好き!でも、カロリーが。。。」と思っている人には嬉しい「甘さ控えめ、優しさ多め」の作りです。
言わずもがな、海藻の王様である「生のり」を使用しているため、とってもヘルシー。
これはジャムの代わりのアレンジメニューとは言わず、日本人好みのメインメニューとなり得る逸材商品です。
その他にも「十字屋」さんには自家製の美味しい水産加工品がズラリと販売されています。
食欲をそそるこだわりの品々は、どれも一食の価値アリです。
お中元やお歳暮などの贈答品としても、喜ばれること間違いなしです。
店舗の二階には世にも珍しい「河童博物館」が併設されており、初代主人・下館準一郎氏が半世紀に渡ってコレクションした作品が並んでいます。
美味しいものアリ、珍しい作品アリ、訪れる価値アリ!!のとっても素敵な場所でした。
愛する塩竈の前途に幸あることを願い、ここで筆を置かせていただきます。
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「十字屋」
宮城県塩竈市藤倉三丁目5-14
http://www.jyujiya.net/index.html
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Thu
February,2014